最高裁判所第一小法廷 昭和31年(オ)1047号 判決 1958年9月11日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人竺原巍の上告理由について。
しかし、原判決は、挙示の証拠で、結局控訴人ら(被上告人ら)四名が共同して振り出した本件手形は、受取人白地のまま満期日後約一ヶ月を経た後手形金の支払により振出人の一人である宮本津吉に受戻されたものを更に同人からそのまま被控訴人(上告人)先代井川文雄に交付され、同人において受取人を自己に補充したものであつて、被控訴人主張のごとく井川文雄は受取人を同人とする本件手形を満期前に振出交付を受けたものではないと認定しており、その認定は、挙示の証拠で肯認することができる。されば、右のごとき事実関係の下において、原判決が、本件手形は、右のごとく支払により無効となつたものであつて、満期後に受取人白地の手形を受け取つた被控訴人先代文雄、したがつてその相続人であることに争のない被控訴人に対抗しうるものと解したのは、当裁判所においてもこれを正当として是認する。それ故、論旨第一は、採用し難く、また、論旨第二は、違憲をいうが、原判決の判示に副わない事実関係を前提とするものであつて、採るを得ない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 斉藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 高木常七)